サンデーサイレンスの血統表でみる「3/4同血」「1/4異系」「配合的な緊張と緩和」
これの続編としての「アーモンドアイ編」です
初出は今春発売のカドカワムック「一口馬主&POG攻略読本 愛馬選びはここを見よ!」
このムックに寄稿したときに、私が書くことですから「全きょうだいクロス」「3/4同血クロス」「1/4異系」のワードが頻出するので、それらの説明をまとめたページを別に設けたいということで、最近の活躍馬で良い題材はないかと
「あ~それやったら、アーモンドアイの6代血統表が載せられれば、笠理論のだいたいはそれ一枚で説明できますよ」
以下で説明しますが、アーモンドアイの血統表には「配合史」に書いてあることの全てが詰まっているといっても過言ではないので、この稀代の名牝が引退するにあたって、当ブログにも再掲しておこうかと思い立った次第です
◆全きょうだいクロス、3/4同血クロス
父と母が同じ馬を「全きょうだい」と称し、その2頭を血統表中に持つと「全きょうだいクロス」として、=を使って通常のクロスと同じようにカウントします。また父が同じで母が姉妹や親子のような関係は、血統の3/4が同じ「3/4同血」として扱い、これも≒を使って「3/4同血クロス」として扱います。
アーモンドアイの5代血統表をご覧ください。アーモンドアイにはNureyev5×3と、Northern Dancer5・6・6×4のクロスがあります。そして父ロードカナロアの母レディブラッサムには、略図のようにSecretariat=Syrian Seaの全きょうだいクロス3×4があります。種牡馬ロードカナロアが伝えるしなやかで俊敏な体質は、主にこの全きょうだいクロス由来と考えられます。
┌Bold Ruler
┌○┌Secretariat
│└△└Somethingroyal
レディブラッサム
└△
└△
└△┌Bold Ruler
└Syrian Sea
└Somethingroyal
そしてこれも略図を参照していただきたいのですが、アーモンドアイにはトライマイベスト≒ロッタレースの3/4同血クロス5×2も存在します。トライマイベストもロッタレースも母は名繁殖Sex Appealで、父はNorthern Dancerとその息子Nureyevです。アーモンドアイの牝馬らしからぬ強靭な走り、特に前捌きの逞しさ力強さや地面を掴む強さは、この3/4同血クロスの影響を強く感じさせるものです。
┌Northern Dancer
トライマイベスト
└Sex Appeal
┌Northern Dancer
┌○
ロッタレース
└Sex Appeal
このような全きょうだいクロスや3/4同血クロスは、通常のクロスよりも優れたものとして評価します。全きょうだいクロスや3/4同血クロスが生じるということは、ある優秀な繁殖牝馬の子孫たちが競走馬として繁殖として次々と成功し、様々なラインを通じて血を拡散しつづけてきたからに他なりません。
Secretariat=Syrian Seaの母Somethingroyalもトライマイベスト≒ロッタレースの母Sex Appealも歴史に名を残す名繁殖で、子孫や牝系が大繁栄しました。それぐらい優れた繁殖牝馬の血を含んでいるということから、全きょうだいクロスや3/4同血クロスを高く評価するわけです。ちなみにSex Appealはこれも超名繁殖として名高いLa Troienneの血を、Busanda≒Mr.Busherの3/4同血クロス2×3を経由して受け継いでいます。
◆ニアリークロス
全きょうだいクロスや3/4同血クロスほどではなくとも、血脈構成の5/8ぐらいが共通するような血同士をニアリーな関係とみて、それらを血統表内に持つことを「ニアリークロス」と称して、ふつうのクロスに近い効果があると考えます。重要な牝馬の血を含んでいる場合は、ふつうのクロス以上に評価する場合もあります。
ディープインパクト×Storm Catの組み合わせは、リアルスティール=ラヴズオンリーユー、サトノアラジン=ラキシス、キズナ、エイシンヒカリ、アユサンなどが出てスーパーニックスと認知されています。
配合略図をご覧いただきたいですが、このニックスの根拠は、ディープインパクトの母父の母父Sir Ivorと、Storm Catの母Terlinguaの血脈構成がかなり共通する点にあると考えられます。この場合、キズナはNorthern Dancer5×4のクロスと、Sir Ivor≒Terlinguaのニアリークロス5×3を持つと表記します
┌Royal Charger(Nasrullahと3/4同血)
┌○
┌○└Somethingroyal
Sir Ivor
│┌○┌Sir Gallahad
└△└△
│┌Pharamond
└△
└△
└Alcibiades
┌Nasrullah(Royal Chargerと3/4同血)
┌○
│└Somethingroyal
Terlingua
└△ ┌Pharamond
└△┌○
││└Alcibiades
└△┌Sir Gallahad
└△
◆配合的な緊張と緩和と「1/4異系」
同じ血についてのクロスやインブリードを重ねていくと、近親交配の弊害も心配されます。優れた血のクロスを重ねる一方で、それとは縁遠い別のラインの優れた血も随所に取り込んでいく必要があります。筆者がよく言う「配合的な緊張と緩和」です。
アーモンドアイの血統表をもう一度ご覧いただきましょう。前述したように、アーモンドアイにはNorthern Dancer5・6・6×4のクロスがあります。この血統表を祖父母4頭に4分割してみた場合、母父サンデーサイレンスのところだけはNorthern Dancerの血が全く入っていないことがわかります。
このように血統表の3/4で同じ血のクロスを重ねつつ、残りの1/4だけはそれとは無縁の血で構成するという配合手法は、サラブレッドの馬産の歴史において、数多くの名馬や名種牡馬や名繁殖牝馬を生み出してきました。
インブリードによる優れた資質の固定と、アウトブリードによる雑種強勢の活力。この二つを同時に満たそうという考えです。この場合、アーモンドアイの血統表におけるサンデーサイレンスを「1/4異系」と呼びます。ちなみにロードカナロアも母母サラトガデューだけNorthern Dancerが入らない「3/4Northern Dancer」です。